情報取捨選択できない

取捨選択がうまくできず情報に振り回され続けると、人間は思考停止状態に陥ります。また仕入れた情報を疑いもせず、そのまま自分の脳にコピペする人もいます。それは自分の頭でものを考える権利を放棄してしまっている人です。正誤溢れる情報の取捨選択が難しいアフターコロナのこの時代に、少しでも実際の経験に基づく情報を提供し、皆様の役に立っていきたいと考えています。詳しくは第0話をご覧ください。「取捨選択できない原因〜捨てる勇気を持つべし！〜」です！目次. 「編集？ライティング？うーん……なんだかよくわからない。具体的にどういう仕事やってんの？」—— おそらく業界外から眺めたとき、なんだか得体のしれない職業だと思われているケースも多いだろう。だが、侮ってはいけない。その沼の深淵を。ほんの一歩でもその沼に足を踏み入れた者は、微塵も底が見えない群青色の水に絡めとられるように、もっと深く、どこまでも深く——気づけばもう後戻りできないところまで、必死に潜り続ける自分を発見することになるのである。2019年冬、そんな沼にどっぷり浸かり続けている2人がたまたまこんな会話を交わしたことから、それははじまった。「わたしたち、自分たちがどっぷりハマっているこの沼のあれこれについて、いい加減、ちゃんと明るみに出すべきなのでない？」「うん、そうね。みんなに声をかけてやってみましょ」、と。＊　＊　＊これは「ライティング」という、なかなかどうしてままならない仕事について、ノウハウと知見の棚卸しを目的に集まった5人の登場人物が、当初の目的をすっかり忘れてどんどん“ライティング沼語り”にハマっていく様子をそのまま記した記録です。ほぼそのときの会話のまま残しているので、当人たちだけでなんだかよくわからないまま盛り上がっている箇所も散見されますが、あしからず。-----＜これまでの沼マップ＞-----O島：今日はね、実はライター・編集者以外の方にも参加してもらっているんですけど……S子さん。グラフィックレコーディング（以下、グラレコ）の仕事をされているんですよね。H野：わたし、グラレコってまだよく知らない世界かも。基本的にリアルタイムで話を聞きながらその内容を整理して、絵や図に起こしていくってことですよね？S子：そうですね。基本的にその場で描いていきます。H野：私たちライターは、取材した後に文字起こしをするなり何なりして、それなりに時間をかけて情報をピックアップしてから原稿の構成ができるじゃないですか。J氏：そうですよねー。H野：それをその場で描きながら……脳の使い方、めちゃくちゃフル回転ですよね。N山：すごいっすよね。S子：同時通訳と同じ感じですね。一同：いやぁ……（感嘆）。N山：どの情報を拾ってどこは捨てるのか、考えながら描いてるってことですかね？　話を聞いて絵を描きながら、流れてきたキーワードを、脳内でピン留めするみたいな。S子：そうです、そうです。ピン留め。H野：すごくない！？O島：すごい。言葉で説明すると簡単に聞こえるかもだけど、相当難しいですよね。O島：リアルタイムかどうかの差はありますけど、編集者やライターがやっている「原稿構成」と「グラレコ」、似ているところがあると思っていて。どちらも、「情報をどう捨てるか」が肝になるじゃないですか。S子：そうなんですよね。H野：大事ですねー。J氏：僕、見よう見まねで採用関係の原稿を書きはじめた頃は、もう全部、伝えたい情報を盛り盛りで書いてしまっていましたね……。一同：ああー（激しい同意のうなずき）。J氏：自分でもあとから記事を読み返して、「いや、これ絶対読まれないじゃん？」って思うんですよ。でも、どこをどうカットしたらいいのかわからなくて。O島：情報を捨てるのって、勇気いりますよね。J氏：いや、ほんとに。「え、だってこれも伝えたいんだけど」「こっちもめっちゃいい話じゃん！」って。S子：わかるー！N山：アンパンマンが活躍してる話なのに、いきなりドラゴンボールの悟空とかまで登場しちゃう……（笑）。O島：「強いなそっちも！」みたいな。H野：その話も確かにおもしろいんだけど、でも……っていうね。ありますね。H野：実際に記事を書くときに「大半の情報は捨てている」事実について考えると、ほんとにヤバい、責任のある仕事をしてるんだなって思いますよね。自分の意志で、取り上げる内容を選択できてしまうってことじゃないですか。S氏：うん、うん。H野：私が「削る」と判断した情報は、もうそこまでで……。N山：ある意味、なかったことになっちゃう。H野：だからものすごく責任重大な仕事をしているんだな、と自覚する一方で、ある程度、どこを残してどこを捨てるか、その判断に自信をもてていることもあって。一体その自信はどこからきてるのか、正直わからないんですけど。N山：H野さんは、もうご自身の中に編集の機能を内包できてるんじゃないですかね？H野：そうなのかなあ。O島：それ、ある気がしますよ。編集視点があるかないか。S氏：その取捨選択って、まずはクライアントや媒体に何を書くことが求められているかによって、変わってきますよね。O島：基本はそうですね。情報の取捨選択に迷ったときは、最初に設定した目的、企画意図に立ち戻るかな。何回も。H野：ああ、確かに大前提として、企画書をめっちゃ見直すっていうのは私もやってるかも。N山：ただ、僕たちがどんなに一生懸命書いた記事でも、今日読んだ記事の内容、明日にはもう、みんな忘れてるんですよね。大体において。1本の記事の中で、記憶に残る情報がひとつあるかどうかじゃないですか。O島：読み手の人たちは、そんなにいっぺんに情報を受け取れないんですよね。書き手である私たちが思っている以上に。J氏：すごくわかります。N山：「これらの情報すべて大事です！」っていうのは、発信側の都合でしかないなぁ、と。だから「この記事の中で、ひとつしか伝わらない」と割り切ることも大事だと思ってます。S子：みなさんは記事を構成するときに、取材して、その文字起こしを見て、「今回はこれを伝えよう」と内容を絞っていくんですか？N山：あ、でも実は僕、最近はそうでもないかも……。一同：あははは！（笑）。O島：実際は、どんな感じで書いてます？N山：すごく複雑な内容の話を、どこまでその“複雑なままの良さ”を出せるか、みたいなところが、自分の中のテーマになってきちゃってて。H野：あー、なるほど。ハイコンテクストな文脈とか。N山：うん。でも基本は、たった1つのメッセージに向かって、いろんな話、関連のあることをつないでいくのが大事かなと。それにどんなにハイコンテクストで複雑な内容の記事でも、最終的には何かしら、1本の軸を通すことになりますしね。O島：確かにそうですね。メッセージにつながる根拠をていねいに示したり、関連ある話題をからめたりしながら。N山：そのうえで、クライマックスをどこに持ってくるかを考えて、時系列を入れ替えたり、トピックスを並べたりしますよね。O島：うんうん。H野：（O島に向かって）……私それ、できてますかね？O島：えっ、今、そこ不安になるとこ？（笑）最後まで読んでくださってありがとうございます！けっして、その沼からは、抜け出せない。

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