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academist Journalは、学術系クラウドファンディングサイト「 ©2019 - 2020 Fukui Prefectural Dinosaur Museum All rights reserved. 福井県立恐竜博物館が行った発掘調査についてはこちらをご覧下さい。 恐竜博物館の調査研究(博物館研究情報) ページの先頭へ . 1980年代に入り福井県で中生代の動物化石(ワニ類)が発見されたことから恐竜の化石も出るのではないかと考えていたのが、当時、福井県立博物館の学芸員だった東洋一(あずまよういち)さんだ。県立博物館で地質・古生物を専門とする学芸員は東さん一人だけだったという。 福井県にある恐竜を中心とする地質古生物学専門の博物館のWebサイト。館内には44体もの恐竜全身骨格をはじめ、化石やジオラマ、大迫力の復元模型等が数多く展示されており、大人も子供も夢中になれます。足跡化石を中心に発掘体験ができる野外恐竜博物館もあります。 福井県勝山市は白亜紀の恐竜化石の産地として有名で、ひとかけらでも恐竜化石が発見されればたちまち脚光を浴びます。しかしその裏側で、何千、何万というカメの化石が発掘されていることはあまり知られていません。私たち研究グループはそんなカメ化石に着目し、日本で発見された化石に世界最古のスッポンが含まれていることを確認しました。スッポン(スッポン科)の化石は南極以外のすべての大陸から発見されてお … 9時~12時30分入館は12時、16時まで(入替制) すべての人に、学問のよろこびを – 最先端研究を伝える学術系メディア福井県勝山市は白亜紀の恐竜化石の産地として有名で、ひとかけらでも恐竜化石が発見されればたちまち脚光を浴びます。しかしその裏側で、何千、何万というカメの化石が発掘されていることはあまり知られていません。私たち研究グループはそんなカメ化石に着目し、日本で発見された化石に世界最古のスッポンが含まれていることを確認しました。スッポン(スッポン科)の化石は南極以外のすべての大陸から発見されており、現在もユーラシア・北米・アフリカの河川や沼地で、水底に潜む生活をしています。勝山市の恐竜発掘現場から発見された化石1点が世界最古級のスッポンである可能性は、共同研究者の平山教授が今世紀初頭に指摘していました。ただしこの化石は極めて断片的なもので、骨表面の凹凸などわずかな特徴を除いてスッポンであることの証拠に乏しいものでした。しかしその後も大勢の発掘隊員の努力によりカメ化石の発見は続き、私と福井県立恐竜博物館の薗田研究員らの追加調査から、福井では恐竜とともにスッポンが生息していたことが確実になってきました。スッポンの特徴のひとつは、甲羅を構成する骨が著しく少ないことです。骨の数も面積も、スッポンの甲羅は他の亀の甲羅と比べて極端に退縮しています。特に明らかなのは、甲羅を縁どる「縁板骨」と呼ばれる骨が完全に消失していることです。甲羅の縁取りがなくなった結果、甲羅からその一部である肋骨が飛び出しているように見えます。スッポンの特徴2つめは、ウロコを持たないことです。爬虫類の体は普通、角質(タンパク質の一種)でできた硬いウロコに覆われていて、特に通常のカメの甲羅では巨大化したウロコが規則的に配列し、おなじみ六角形の「亀甲」模様を作っています。しかしスッポンはこのウロコを持たず、甲羅も手足もカエルのように柔らかい皮膚に覆われています。これらの形態の特徴は、しかし、福井のカメ化石を分類するうえでは必ずしも十分ではありません。福井で発見される白亜紀の脊椎動物化石の多くは、河川で堆積するまでにバラバラの骨片になってしまっているからです。まず、縁板骨を持っていなかったかどうかは、縁板骨以外の甲羅の破片からはわかりません。また、角質は化石には残らないため、甲羅の骨一片のさらにかけらからは、ウロコやその痕跡が本当になかったかどうかを証明することも困難です。一方10年ほど前、スッポン科の甲羅の骨を顕微鏡で観察した研究者が、骨のコラーゲン線維の束が非常に規則的に配列していることを発見しました。その配列はまるで、建築に使用する「合板」のように、あるいはグラスファイバーを編み込んだ強化プラスチックのように、線維走行の異なる層を何枚も貼り合わせた構造をしていました。普通、カメの甲羅ではコラーゲンはただ平行に並んでいるか、不規則に折り重なっているかのどちらかです。合板状の構造が正真正銘のスッポンにしか見られないものであれば、甲羅のほんのわずかな断片からでも、スッポンである証拠を得られる可能性が生じるのです。そこで私たちは、これまで形態的特徴をもとにスッポン科に分類されてきた白亜紀のカメ化石と、スッポン科に近いがスッポン科には含まれないカメ(スッポンモドキ科、その他のスッポン上科)の化石を集め、顕微鏡で観察を行いました。その結果、スッポンモドキ科や、スッポン科の祖先に最も近いと言われた化石種でも、コラーゲンはただ平行もしくはランダムに配列していたのに対し、白亜紀以降のスッポン科とされる標本はすべて、はっきりとした合板状の微細構造を有していることが確認できました。つまり、合板状の微細構造は、スッポン科の分類学的特徴として極めて信頼性が高いことが示されたのです。あらためて福井県立恐竜博物館に所蔵されているカメ化石の微細構造を観察したところ、厚さわずか2mmほどの甲羅の骨に18層もの合板状の微細構造が確認され、少なくとも3標本の「世界最古」のスッポン化石が含まれていることが証明されました。さらに最近になり、腹側の甲羅の骨や四肢、肩、腰の骨などスッポン科とみられる化石数点がまとまって発見され、甲羅の骨が退縮した様子などもわかってきました。断片的な骨格の形態情報から判断する限り、その姿は現在生息しているスッポンとほとんど変わらないものであったと想像されます。この最古のスッポンが発見された「北谷層」は約1億2000万年前の地層で、この時代は白亜紀の前期にあたります。中国でも最近白亜紀前期の地層からスッポン科の化石が発見されていますが、日本産標本の時代は中国のものと同じかそれよりもわずかに古いと推定されています。白亜紀の中ごろ(前期と後期の境界前後、約1億年前)になると中央アジアでも化石が見つかり始め、白亜紀後期のうちに北米やヨーロッパからも化石が発見されるようになります。そして現在までの間、スッポンは南半球を含む全世界へと放散していったのです。なぜスッポンの化石がそんなに重要なのか? それは、彼らが現在も世界中に生息しているからに他なりません。彼らの起源を知ることは、現在私たちを取り巻いている生態系の起源を知ることに直結するでしょう。白亜紀前期から中ごろにかけての地球では、史上最高規模の温暖化が進んでいました。北極の氷床が急激に縮小し、世界的な大気循環に影響を及ぼした結果、中緯度地域に沼地が増えていったと考えられています。私たちが同定した最古のスッポンは、まだ全世界的に大陸が乾燥していた時代、ユーラシアの中でも比較的湿潤だった沿岸域で発生したものでしょう。その後スッポンは温暖化・湿潤化したユーラシア内陸部、北米へと分布を拡大していったことが伺えます。興味深いことに、白亜紀中頃の温暖化・湿潤化の時代では、現生鳥類を含むグループ(真鳥類)や、被子植物、花粉を媒介する昆虫など現代型の生物が一斉に多様化したと考えられており、それらの最古の化石のほとんどは中国やミャンマーなどアジア東部から見つかっています。スッポンもまた、白亜紀前期に現れた現代型の生物であり、東アジアを起源として、ユーラシア大陸に暖かく湿った環境が広がるに従い分布を広げ、現存する生態系の一員としての地位を確立していったと推察されます。小指の先ほどしかない甲羅のかけらから始まった研究ですが、恐竜の全身骨格にも劣らない大切なことを私たちに教えてくれました。
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